激闘アジア大会を振り返る

加藤 敦志 講師一覧


女子の世界選手権で決勝は中国と米国が対戦すると
新聞報道。近年急成長したブラジル、イタリア
そして古豪ロシア等に押され気味だった実力のある
2チームが復活の兆し!

両国とも女子バレーには力を注いでいるところ。
ですから、面白い対戦となったと思います。

実力のぶつかり合いも然ることながら、この両国に
深く関係してきたのが日本のバレーボールという
ところからも興味を引きます。

50年前の東京五輪で金メダルに輝いた
女子バレーボールチームの大松監督が後年中国で指導。
東洋の魔女の極意を伝授?したのでした。また米国には
1976年モントリオール五輪では守備中心のバレーボールを
攻撃中心の戦略を用いて金メダルを奪い返した
女子バレーボールチームの山田監督。

その門下生の吉田敏明コーチが米国ナショナルチームの
コーチ(後年監督となりました。)なって
日本式バレーボールを米国で移植したのです。

加えて、その東洋の魔女の活躍に触発されて8年後の
1972年のミュンヘン五輪で男子を金メダルに導いた
松平監督が編み出した速攻コンビネーションバレーボールは
男女の壁を越えて今や(両国だけでなく)世界中の
バレー戦術のスタンダードになっています。

今回この世界選手権では全日本女子チームは2次リーグで
敗退してしまいましたが、日本のバレーボールという点から
考えると、いわば「教え子」たちの決勝戦となったわけです。
見方を変えるとお家芸を凌駕されたとも言えるわけですが、
基礎研究をした日本、応用研究で実用化した中国、米国
ということですから、基礎研究で成果を出した日本は
やはり誇れるものなのです。それは、基礎がなければ
応用は効かない訳ですから。

日本のバレーボールは素晴らしい。
それを再確認させてくれる出来事だと感慨深い、私です。
前置きが長くなりました、日本バレーボールの真価に
ついてお話しました。

今週もよろしくお願いします。
◎なぜ男子が(アジア大会で)2位という好成績を
上げられたか。-自説-

振り返ってみるとキーポイントとなる試合が準々決勝の
インド戦のフルセット勝ち、そして準決勝の自国開催、
完全アウェーでの韓国戦に勝利したことです。

1、体格に勝るインドに勝った意義。

2m級の選手を多く抱えた新興勢力のインドに対して、
課題とされる高さに苦しみながらも、若い選手たち
(特に石川、山内という大学生コンビ)が臆することなく
救世主となったことが大きな収穫。

今までは高さという課題にぶち当たった時に自滅
という崩れ方をしていたのが払拭されたような
胸のすく一戦だったと思います。

これまでは、(相手の)高さということに目を奪われてしまい、
怯えて、その高さに関係しないプレーまでおかしくなって
しまった負の連鎖を断ち切れたこと。

若い選手の怖いもの知らずの思い切りの良さ、
これが新生南部ジャパンの推進力になった。
そんな行く先を明るくする、意義のある試合だったと思います。

2、モチベーションの高い韓国に勝った意義。

アジア大会、オリンピックで優勝すると(男子選手の)
兵役が免除になるという特典がある韓国。

すごい勢いでくることは必定。それも地元開催で相手が
ライバル日本ですから、試合前から一層士気が上がって
いたことでしょう。

この状況を冷静に判断して日本の劣勢は免れません。
しかし、しかしですよ、これが勝負の面白いところなのでしょう。
あまりにも期待と自らのモチベーションが大きく高まりすぎて、
却ってプレッシャーを自分にかけ過ぎた傾向があります。

それが証拠に韓国は、サービスミスを多発して自滅しました。
(特に1セット目。)これを日本がものにしたことで
この試合を優位に進めることができたことは間違いありません。

逆U字(∩)曲線。
スポーツ心理の領域ですが、気持ちの高揚(テンション)は
高すぎても低すぎてもだめ、そう、モチベーション(やる気)は
上がり過ぎても、下がり過ぎても結果としてうまく行かなくなる
ということ。

要は逆U字=∩の頂点のところに気持ちを据える、
いわば中庸が求められます。ずっと一定にということではなく、
平均として中間地点にいることと言えると思います。韓国は
自らの利点を不利な点としてしまった!と思いました。
試合に勝つことは本当にむずかしいですね。しかしその好機を
招いたのは実力があるからです。
アジア大会。復活バンザイ、日本!

【追伸】、、、

この8月に、長野小諸で恒例の高校女子合同合宿に参加させてもらい、
そこでの出来事や気付きをお話ししていました。
その中心テーマはブロックでした。そして、ブロックの機能は
4つ説明しました。

「止める、弱める、誘い込むそして威圧する」。

このキーワードを4つ忘れないで下さいね。
また後日説明します!そうなんです連載の「夏合宿のまとめ」が
まだ済んでいませんので、、、(秋が深まっているのにスミマセン。
でも、また、よろしくお願いします!)

【編集後記】

2週続けて大型の台風に見舞われてしまった我が国・日本。
本当に災害列島なのですね!先週の18号の時は自宅で待機を
して身動きが取れませんでした。

幸いにも電気と通信(IT)技術のお陰で仕事の影響は
ありませんでした。今更ながらインターネットの恩恵を
被っていることを強く感じたのでした。

それにしても大自然の前には人間は小さいことをやはり
思い知らされます。今、夜21時。そろそろ風雨が
強くなってきました19号が関東に迫って来ています。

皆様の地方は如何ですか?
どうか安全にいらっしゃることをお祈りします。

またまた先週と同じことですが、小さな人間が叡智を
絞って育んだスポーツという文化を慈しみ育てて、
私たちの生きる糧となれるようにもっと発展させたいと、
嵐の中で思うのでした。

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