【スパイクレシーブ】全て拾おうとすることはNG
もし、あなたが公立一般校のバレーボール部の指導に携わっていて、「どうにかして試合でのスパイクレシーブのミスを減らしたい…!」と思われているのなら・・・
『全てのボールを拾おうとすること』を今すぐやめてください。
なぜなら、
・学校の体育館が使えるのは平日に週2日だけ
・山間にある僻地校で南北120kmに他の高校がない
・電車は日中に3~4時間に1本しか走っていない
・夕方6時過ぎには部活を終えなくてはならない
・田舎なので、人口も少なく、部員数も少ない
・公立校なので、能力の高い選手をスカウトする特待生制度もない
・入部してくる選手は、中学時代、無名の選手ばかり
という環境下にも関わらず、何度も県大会を制し全国大会へ出場している女子バレーボール部が採用しているスパイクレシーブのルールが・・・
『全てのボールを拾おうとしないこと』だからです。
なぜ、地面にボールがつくと得点が入るスポーツなのに、わざわざそんなルールを決めているのか?
その理由と、練習してもスパイクレシーブミスが思うように減らない原因について、弱者を育て全国へ導くベテラン指導者である益田清風高校女子バレーボール部顧問の熊崎雅文氏にインタビューしてきました。
-聞き手-
「スパイクレシーブのミスを思うように減らせないというチームが多いようですが、その原因は何でしょうか?」
-熊崎監督-
たとえば、強いチームを作りたいと考えたとき、多くのチームは、全日本チームや強豪校などの強いチームがやっていることを真似しようとします。
ひとつは、「型にハマりがち」ということが言えると思います。
ですが、考えてみてください。
あれは、上手い選手だからできることなんです。
素質に恵まれない選手が同じ発想でいいのか。同じことをやろうとすれば、当然、身体能力の差が出てきます。
つまり、同じことをやろうとしたところで、できない。
わずかにできたとしても、もともとの能力の差があるので、勝てない。
ですから、一般的なチームは、強者の真似をするのではなく、発想を変えて練習に取り組むことが重要だと考えています。
スパイクレシーブを例にお話しましょう。
どこのチームの監督も、「いかにボールを拾うか」ということを考えていると思います。
その場合、そのチームの選手がボールを落とすと、「今のは、こう拾えばいい」「今のは、お前が拾え」と教えるんです。
また、同じ選手に対し、ある時は「前にいればいい」と言い、ある時は「なぜ下がっていないんだ」と言うケースも多いです。
でも、私は選手たちに、「拾えないものは拾わなくていい」と教えています。
選手が、1mしか守れないのなら、それでいい。
3m、4mも守れ なんてことは言いません。
なぜなら、あれもこれも守れとか、前も後ろも横も拾えという指導では、選手は不安な気持ちのままコートに立つことになります。
だから、拾えないボールは、拾わなくてもいい。
なぜならば、バレーボールという競技は、1セットで23点、24点失点してもいいんです。
その代わり、守れる1mの範囲のボールに関しては、できるだけミスは減らす。
大切なのは、「失点の仕方」「失点の中身」なんです。
下手な選手でも、自信を付ければ変わります。
「ミスをしたら終わり」では、ミスを恐れて選手は固まってしまいます。
そうなると、必然的にミスは増えてしまう。
でも、仮に2mしか拾えない選手に、「1mだけでいい」と伝えると、選手の内面に安心・余裕・落ち着きなどの変化が起こります。
技術指導以上に、選手たちが活躍する方法を考え、その確率の高い方法を取り入れることも大切ではないでしょうか。
難しいことをやり過ぎれば、選手は不安になり、ミスが生まれる。
シンプルに取り組めば、もっと力を出せるんです。
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見境のない、あれもこれも拾おうという教え方は、結果的に選手たちに難しいことを要求し、プレッシャーをかけていることになります。
仮にあなたが「そんな教え方はしていない」と思っていても、選手たちが「どんなボールも拾おう!」という気持ちでプレーしているとしたら同じことです。
やるべきことをシンプルにし、選手が持つ本来の力を発揮させてあげましょう!
益田清風高校 女子バレーボール部監督
バレーボール指導歴36年。これまで、定時制高校、新設の職業高校、山間の僻地校など、練習環境が整わず、素質に恵まれない選手たちの指導を多く手がける。定時制で3回、新設高校で2回、山間僻地高校で5回、県の優勝へ導く。独自に作りあげた「弱者が勝つためのバレーボール」は、多くのバレーボール指導者から注目されている。
【主な戦績】
・2008年「春の高校バレー」出場
・2008年「大阪インターハイ」出場
・2011年「青森インターハイ」出場
・2015年「春の高校バレー」出場
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