宇佐美大輔と朝長孝介に学ぶセッター論
バレーボールにおいてセッターとは、攻撃の要となる主役のポジションである一方で、基本的には自身では得点を取らない裏方のポジションでもあります。
これは、ポジションという「役割」がそうなのであって、そのポジションに付くのはあくまで「人」です。
ですので、その人が持っている性格や特性によって、同じポジションでありながらも違ったパフォーマンスを見せるのがセッターの魅力です。
私自身も、一時期セッターをやっていましたが、個人的な見解としてセッターは大きく2パターンのタイプがあると考えています。
この2つのタイプは相反するものであり、プレースタイルやチームへの貢献の仕方等は全く異なります。
そこで、少し前の世代になりますが、同じ全日本で活躍された宇佐美大輔選手と朝長孝介選手を事例に、その異なる特徴を見ていきたいと思います。
宇佐美大輔は「皇帝セッター」
宇佐美大輔選手と言えば、高さを活かしたパス力やキレのあるトスワークで活躍されたセッターです。
彼は高校までアタッカーであり、大学時代にセッターに転向したというバレーセンスを持っています。
そんな彼なので、セッターでありながらもアタッカー気質が強く、負けず嫌いも人一倍です。
彼のプレースタイルの根底は、「アタッカーが最も打ちやすい・望む状況を作る」ことであり、アタッカーは自身のトスについてこさせる存在であることです。
彼のトスを見ていると、「おれのトスを打てるものなら、打ってみろ」というセリフが伝わってくるくらい強気に満ち溢れています。
彼の場合、上記の主役ポジションの色が強く、正にコート上において与えられた支配権を大いに行使する皇帝のようです。
朝長孝介は「仕事人セッター」
一方で、朝長孝介選手は、高さや速さでは宇佐美選手に劣るものの、試合全体を見通したトスワークやいわゆる「声でプレーする」ようなムードメークが光るセッターです。
試合前には、コンビネーションの確認や卓上でゲームシミュレーションする万全の準備で臨む信条があるようです。
彼のプレーを見ていると、「いかにアタッカーに気持ちよく打たせるか」ということを重視しているように思え、「アタッカーのミスはセッターの自分の責任」と語っているように思えます。
私自身もこちらのタイプだと認識していますが、これは自身の弱みを客観視できているからこそ、他の部分でそれを補い、役立とうと考えてプレーする結果だと思います。
彼の存在は、チームのために自身の役割に徹する正に、仕事人のようです。
どちらが優れているではない。自身に合ったプレースタイルで成長すること
結論から言うと、セッターのタイプに正解は無いと私は考えています。
今回、ご紹介したのはあくまで一例であり、この2パターン以外のタイプがあっても不思議ではありません。
重要なことは、セッターというポジションを任されたその人が、自身の性格や特徴を踏まえて、自身に合ったプレースタイルを意識し、成長することです。
勝気な性格なのであれば、宇佐美選手のように振る舞うことが効果的でしょう。
「おれは誰よりも質の高いプレーをする。だからアタッカーもそれに応えてくれ」と有言実行の姿勢でいることが自身の成長にも、チームをまとまることにも有効になると思います。
また、私のように体格的に劣等感があるなら朝長選手のように、実際のプレーに加えて声かけやムードメーカーとしての地位を確立させ、「こいつのために、ブロッカーの壁打ちぬいてやる」とアタッカーに思ってもらえれば、しめたものです。
いずれのスタイルにおいても、チームの信頼を得て思い描いたように攻撃を組み立てることこそ、セッターに与えられた使命であり醍醐味だと思います。
はじめまして。火曜日と担当させていただきます辻 貴大(つじ たかひろ)と申します。出身は千葉県で、県立千葉東高等学校で県立高校ながらベスト8・関東大会出場の経験があります。ポジションはレシーバーで、身長は168cmと体格には恵まれないものの、チームのムードメーカー、レセプションの安定性、小柄ながら最高到達点3m5cmの跳躍力を原動力にレギュラーとして活躍しました。自身の経験も踏まえ、小さいバレーボーラーに勇気を与えられるような魅力的な記事をお届けしていきたいと思います。
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